偽善的手法

もうひとつの理由は簡単に推測できます。

当たっていると思いたい
占われる側の性癖を逆手に取り
当たっていると思わせたい
占う側の大半が偽善的であるからです。

占う側がこんなにも優位な状況で
占われる側のお喋り相手となるのであれば
自信満々に言い当てることなど
此の上なく簡単な技法になってしまいます。

対面話術と事前調査

占い師は
当たっていると思わせる定番的な手法を
2つほど隠し持っています。

ひとつ目は
何気ない会話や仕草から
相手の気持ちを探る対面話術...
コールドリーディングと呼ばれています。

笑顔の人に
何か良い事あったんですか?
と尋ねると
何で分かるんですか!
と驚かれるように
ある程度のセンスは必要ですが
誰でも経験を重ねるごとに熟練されます。

ふたつ目は
芸能人などを主な対象とした
事前の情報収集...
ホットリーディングと呼ばれています。

占い師にとって
何かを言い当てることは死活問題でもあり
出来得る限りの調査を
徹底的にやっていると思われます。

忍び込めない寝室ではなく
侵入可能な玄関先の話題が多くなるのも
調査の賜物でしょう。

よく当たる占い師...
それがどうしたって言うんでしょう?

どんなものにも使い方次第の側面はあり
有効に働く機会がないとは申しませんが
欺瞞を孕んだ占いに
自分らしさを見付ける道具としての称号を
与えることはできません。

予言について

未来を言い当てようとする予言についても
少しばかり言及しておきましょう。

予言者は
あなたの親友が大事故に遭うことを
今し方あなたに伝えました。

予言が的中すれば
何らかの作為が働いたか否かを別にして
予言能力への信頼度は高まります。

しかし
あなたは怒るに違いありません。

何故助けようとしなかったのかと。

未来が分かっているなら
災いからの護身が最優先となるはずであり
分かっているだけで
変えることはできないと言うのであれば
矛盾が生じるだけでなく
そもそも

寸分先の出来事を事前に表明する意義は
限りなく薄れてしまいます。

もう一歩踏み込んで言えば
予言に従って事故を回避した直後に
もっと大きな災難に遭うかもしれませんし
予言を聞き入れず事故に遭遇しても
大怪我をして担ぎ込まれた病院で
生涯の良き伴侶に巡り逢うかもしれません。

何かが変化すれば
その先の事象もすべて変化することになり
未来に起こり得る
無限の可能性と比較できなければ
特定の出来事に軍配は上げられず
予言の動機にも矛盾が生じてしまいます。

人間誰しも
胸中に少なからずの不安を抱えており
将来に対する何某かの確証を
僅かでも手に入れたいと願っています。

とは言え
未来の脚本を覗き見できたとしても
複雑な人生において
そこから続く重要な顛末は推し量れません。

人間万事塞翁が馬
(じんかんばんじさいおうがうま)

予言などしてみたところで
不安解消の処方箋にも
選択を変更する理由にもなりません。

人間には苦しみがあるから喜びがあり

人生には分からない未来があるからこそ
誰もが夢や希望を抱くことができます。

神のみぞ知る。

しかし
神も語ることはありません。

予言すること・・・
言い当てることに何の意義もなく

言い当てることなど誰にもできないのです。