口語訳
姿も見えず闇夜に鳴くらしい鶴のように、よそながらあなたのことを聞きつづけているのでしょうか。 逢うこともなくて。
《万葉集の選定》
万葉色役術鑑定士:岩崎智子
《口語訳》
万葉集:全訳注原文付(一)(中西進著・講談社文庫)
親 色
黒 橡(くろつるばみ)
黒橡は、橡の実を砕いて煎じた後、鉄分を含んだ液で発色させた青みの強い黒色です。
橡は櫟(くぬぎ)の古名で、灰汁焙煎では黄褐色の黄橡になります。
泥で染めたような黒は、身分の低い者が着用する衣服でしたが、団栗(どんぐり)で染めた黒橡は、貴人の喪服に用いられるなどして伝統的な色名として受け継がれています。
万葉集には、橡(黒橡色の衣)を詠んだ歌が六首あるとのことです。
子 色
薄 墨(うすずみ)
薄墨は、淡墨色とも書くように、墨を薄めたようなやや薄い灰色をしています。
火を燃やしたあとに残る墨は、鼠色や灰色が使われる以前からある古い色名で、人間が初めて作り出した黒い色です。
平安時代の薄墨色は、訃報を知らせる手紙の墨であり、あまり良い色とは思われていませんでした。
現在でも、薄墨衣(うすずみごろも)は喪服に使用されています。
《説明文の参照》
「日本の色辞典」 (吉岡幸雄著・紫紅社)
「日本の伝統色」 (irocore.com)